高齢化社会で増えるゴミ屋敷。あなたのそばにも、もしかしたら…

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高齢化社会の進展とともに、自宅が片付けられず、ゴミ屋敷化してしまうケースが増加しています。

テレビやYouTubeで、ゴミ屋敷のドキュメントなどが流れますが、大体の方が「他人事」として、ご覧になっているのではないでしょうか。

しかし、これは他人事ではなく、誰にでも起こり得る問題なのです。

自宅がゴミ屋敷になってしまった方の多くが、「自分では手に負えない状態になるまでの記憶がない」と言われます。体をこわしたり、忙しかったり、そんなきっかけで、気が付いたらゴミ屋敷になってしまう場合があるのです。

なかでも、高齢者のご自宅がゴミ屋敷になってしまう例が目立ちます。

本記事では、高齢化社会とゴミ屋敷の関係について、その現状と課題、そして解決策を探っていきます。

買い物をする高齢者

ご自宅がゴミ屋敷になってしまう高齢者、その要因とは

ご自宅がゴミ屋敷になってしまう高齢者の方には、次のような方が多いです。

  • 一人暮らしの高齢者: 家族との同居がなく、周囲からの目が届きにくい環境であることが要因の一つと考えられます。
  • 体力・認知機能の低下: ゴミの分別や持ち運びが困難になり、片付けが億劫になってしまいます。
  • 認知症: 判断能力が低下した結果、ゴミと認識できずにモノを溜め込んでしまう方もいらっしゃいます。
  • 社会的孤立: 近所との交流が少ないと、周囲に助けを求めにくい状況になってしまいます。
  • 過去の思い出への執着: 過去の思い出が詰まったモノを手放したくない、という心理が強く働く場合があります。

これらの要因が複雑に絡み合い、ゴミ屋敷化へと繋がってしまうのです。

体をこわしたり、認知症になったり、というだけではありません。高齢世代の方は、今以上に「物を大切にしろ」と言われて育っているからか、ゴミ屋敷というより、捨てられない「モノ屋敷」になってしまう例が大変多いのです。

これは若い方にも関係があります。疎遠になっていた実家が、気が付いたら実家がゴミ屋敷になっていた、といった例は大変多いです。

ゴミでいっぱいになった実家のイメージ

そして残念ながら、そこに住んでいる状態で解決する事例は大変少ないのが実情です。施設に入ったり、入院するなど、ご自宅を離れるタイミングでようやく、私たちにご依頼が来るケースが大変多いです。

住民が亡くなってから判明するケースも…

住民が亡くなってから判明するゴミ屋敷も少なくありません。 発見が遅れた場合、ご遺体の状態が悪化している可能性があり、特殊清掃が必要になるケースもあります。これは、住人だけでなく、ご遺族にとっても大きな負担となります。

特殊清掃とは、通常の清掃では対応できない、死体や動物の死骸、汚染物などを扱う清掃を指します。専門的な知識と技術が必要となるため、一般の方には対応が困難です。また、悪臭や害虫の駆除、感染症対策なども行う必要があり、費用も高額になります。

もちろん、仮に孤独死されてしまった場合でも、私どものような専門業者を頼っていただければ、故人やご遺族様の思いに寄り添いながら、ご対応させていただいております。

しかし、やはり、それはご遺族にとっては大変なご負担です。

そうなってしまう前に、行政や民間の団体が、ゴミ屋敷の早期発見・早期介入を充実させていくことが重要だと痛感します。

曇り空と団地のイメージ

ゴミ屋敷がもたらす深刻なリスク:命に関わる危険性も

また、ゴミ屋敷になってしまうことの問題は、単に生活環境が不衛生という問題にとどまりません。

  • 火災の危険性: 大量の可燃物が存在し、火元と近づいたり、電気配線が埋もれる・濡れるなど、火災が発生するリスクが非常に高い。
  • 健康被害: 悪臭や害虫の発生による健康被害、衛生状態の悪化による感染症のリスク。
  • 孤独死: 周囲との関わりが断たれ、孤独死してしまう可能性も高まります。
  • 近隣トラブル: 異臭や害虫の被害によって、近隣住民とのトラブルが発生します。

このように、ゴミ屋敷は、単に生活環境が悪いというだけでなく、住人の命を危険にさらす場合もあります。また、周囲の人々の生活環境にも多大な影響を与える可能性があるのです。

ゴミ屋敷問題の解決には、地域社会全体で取り組むことが必要

ゴミ屋敷問題の解決には、地域社会全体での取り組みが必要です。

  • 行政による支援体制の充実: ゴミ屋敷の早期発見・早期介入のための体制構築、専門家による相談窓口の設置、片付け費用助成制度の拡充など。
  • 地域住民の協力: ゴミ屋敷の兆候を発見したら、行政や関係機関に相談する。孤独死の防止活動への参加など。
  • 家族によるサポート: 定期的に自宅を訪れ、様子を確認する。必要に応じて、家事代行サービスなどを利用する。
  • 高齢者への理解と啓発: ゴミ屋敷の問題について広く理解を深め、予防策を普及する。高齢者向けの片付け講座の開催など。

例えば、ご近所の家がゴミ屋敷になっている、なりかけている、と気づいた時、どうすればいいでしょうか。

よその家のこと、と思っているうちに、衛生上の問題、火災といった影響が、ご自分の家にも及んでくる可能性もあるのです。

まだまだ相談窓口を設置している自治体も少なく、正直どうしようもない場合も多いかもしれません。しかし、実際に行政が本格的に対策に乗り出した自治体では、ゴミ屋敷化を防ぐ巡回相談や、カウンセリング・医療とつなぐ取組など、具体的な取り組みが行われてきています。

地域協力のイメージ

最終的には、ゴミ屋敷住人ご本人の意識が変わることが一番重要

そのうえで、実際にゴミ屋敷事例にご対応している経験からいいますと、ゴミ屋敷住人ご本人の意識が変わることが、結局は一番重要なのです

生きてそこに住んでいる状態でご相談いただければ、それが本当は一番良いのです。

ですがそのためには、ご本人様自身が「片付けたい」「ゴミ屋敷状態を解決したい」という気持ちになっていただくことが絶対の条件になります。

ゴミ屋敷対策を本格的に実施している自治体様の資料をみると、どこもそのことがはっきりと書いてあります。住民ご本人の意思を無視して、強制的にゴミ屋敷が片付くことはありません。

なぜなら、たとえ片づけても再び元の状態にもどってしまいますし、そのことでご本人様とお話しできる関係が完全になくなってしまう可能性が高いからです。

そのご本人様の意識を変えていただくために、多くの方が支援をし、相談にのり、働きかけを続けておられるといってもいいかもしれません。

まとめ:他人事ではない、ゴミ屋敷問題への意識改革

高齢化社会の進展とともに、ゴミ屋敷問題は今後さらに深刻化していくことが予想されます。

これは、私たち一人一人が他人事としてではなく、真剣に考えるべき問題です。

地域社会全体で協力し、早期発見・早期介入、予防策の普及、支援体制の充実などに取り組むことが重要です。

また、高齢者への理解を深め、孤独にならない環境づくりも大切です。

ゴミ屋敷問題は、単なる個人の問題ではありません。誰もが安心して暮らせる社会を実現するために、私たち一人一人が行動していく必要があるのです。

そして1番の課題、解決策ではありますが、ゴミ屋敷の住人の方、本人自身に今の状況を理解頂くように訴え続ける事も欠かせません。

3世代家族のイメージ
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